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言の葉と文字列のあいだ

少しの間、あなたの時間をください。

オリンピックは一体「誰が」開催するの?

 こんにちは。

 リオデジャネイロオリンピック、閉幕してしまいましたね。個人的には、スポーツの興味は90%ぐらいサッカーにもっていかれているので、サッカーに関しては今回はとても残念でした。しかし、このオリンピックがあったからこそ、その最終予選を兼ねた「AFC U-23選手権2016」、あのドーハでの伝説の日韓戦が見られたとも言えます。オリンピックはやはりたくさんのドラマを生むのですね。

 そして、普段はスポーツにあまり興味がなくても、やはり表彰台の一番高いところに日本代表の選手が立ち、一番高いところに日の丸が掲げられ、君が代を斉唱する、その瞬間にはやはり胸が熱くなる思いというのを感じた方も多かったと思いますし、僕も感じました。やはりオリンピックっていいなあ、と改めて思いました。

 次は2020年の東京オリンピックですが、こちらはエンブレムの盗作騒動だの新国立競技場建設計画の白紙撤回だの、ついでに都知事が次々辞職するなど、つけられるだけのケチが全部ついたような印象で、誠に情けない感じです。今回のリオオリンピックでも競技者の育成と競技力の向上が実を結びつつあると実感させてくれる成果だったと思いますので、ぜひここから4年間で運営の方も立て直して、また世界を感動させてほしいと思います。

 ただ、これから4年後の東京オリンピックに臨むにあたり、これって一体「誰が」招致してきて「誰が」開催するの?という話を、ちゃんと整理しておくべきじゃないかと思いました。特に報道などでは、そこがきちんと説明されないことが多いので、論点がずれてしまっているということがよくあるという印象を受けます。

 例えば、FIFAワールドカップは「開催国」って言いますよね。それに対してオリンピックは「開催都市」と言います。ブラジルは、2014年にFIFAワールドカップを、2016年にオリンピックを開催しましたが、FIFAワールドカップは「ブラジル大会」、オリンピックは「リオデジャネイロオリンピック」でした。

 そう、オリンピックは「都市開催」なんですね。2020年東京オリンピックは「東京都」が主になって招致をしました。

 実際に、オリンピック招致の是非に関してはきちんと都民の民意は問われています。まず2007年の東京都知事選。このときは2016年大会の招致が最大の争点でしたが、それを公約とした石原慎太郎氏が大勝しました。その後、招致ではリオデジャネイロに敗れましたが、2012年の都知事選で、次の2020年大会の招致を公約とした猪瀬直樹氏が圧勝しました。その後、招致に成功して現在に至っているという流れがあります。

 東京都民は、二度の都知事選で意思表示をし、その民意を背景に東京都が招致活動を行ってきたわけです。逆に言えば、それ以外の道府県民は何らの意思表示も支持もしていないわけです。当然ですよね、「都市開催」なのですから。

 ここまではよろしいでしょうか。

 

 さて、ここで昨日のこのニュースです。 

news.tv-asahi.co.jp

 僕は東京都民ではないので、このニュースを見たときには正直イラッとしました。都知事が東京オリンピックの費用負担について国側を牽制した?何を言っているの?国民全員に費用負担を要求しているの?何だか論点が変わってきてない?という話です。都民以外の道府県民がいつ東京オリンピックの開催と費用負担に賛意を示したのか。なぜ住所地でない自治体の知事に費用負担を要求されなければならないのか。僕は別にオリンピックの開催に反対しているわけではなく、どちらかと言えば賛成なのですが、今のところその意思表示の機会もありません。東京オリンピックを歓迎する「雰囲気」は確かにありますが、費用負担は「政策」であり、それを雰囲気で判断するのは非常に危険です。

 東京都が費用負担をするのは当然として、その経済効果は国全体に波及するのだから国が一定程度負担するべきという考え方もあり、それはある程度は許容しても構わないと個人的には思います。しかし、何を一地方自治体の知事が偉そうに牽制なんかしているの?と思うわけです。違うでしょ、国に、国民に「お願い」するんじゃないの?

 何でしょうね、この違和感は。

 一つ、例を挙げてお話しします。新国立競技場の問題です。

 新国立競技場は「国立」の競技場なので、建設費用は原則として国が賄うべき、というのは当然だと思いますが、その上で、以下の5つの議論のポイントを示しておきたいと思います。

  • 新国立競技場は国民の費用負担による国民の財産であって、都民は国民の構成員の一部にすぎない。
  • 新国立競技場は東京オリンピックに「間に合うように」建設するのであって、東京オリンピックの「ために」建設するのではない(元の計画では2019年のラグビーのワールドカップに間に合うように建設することになっていましたけど)。
  • 東京オリンピックに間に合わせるため、またメイン会場としての仕様を満たすために建設費用が高騰してしまっているが、それも主に東京オリンピックのためであり、他の道府県(民)はその意思決定に参加していない。
  • 設計段階で聖火台がないというミスが発覚し、施主である日本スポーツ振興センター(JSC)が非難されたが、聖火台は「東京オリンピックのために必要」なのであり、東京都は国に「設置をお願いする」立場にある。競技場として、聖火台は別に必置の施設ではない。
  • そもそも国民が費用負担をする「国立」競技場なのだから、別に東京に建設しなければならないという決まりもない。旧国立競技場が東京にあったのだから、新国立競技場は例えば大阪に建設するべきとか福島に建設するべきという議論があっても構わない。他の道府県(民)は、オリンピックのために東京に「譲っている」とも言える。

 このポイントは理解しておいてほしいと思います。 

 その上で、古いツイートで恐縮ですが、東京大学名誉教授でいらっしゃる、かの上野千鶴子大先生のツイートと、恐れ多くもそれに引用RTでつっこむ僕のツイートを貼り付けておきましょう。 命知らず。

 都知事も都議会議員も都民が選挙で選んだんじゃないのかっていう正論はここでは遠慮しておくとして、どちらの意見が筋が通っていると思うかは皆さまのご判断にお任せしますので、ぜひ考えてみてください。ちなみに、ご本人からのリプはもちろんいただけませんでしたが、お忙しい方でしょうから、僕ごときの戯言にかまっている時間はないのでしょう。

 あと細かいようですが、一応法務もやっているのでその立場から付言させていただきます。損害賠償を求めるというお話であれば、それは「行政監査請求」ではなく「住民監査請求」だと思われます。これらは全く別の制度です。さらに、住民監査請求の対象は地方公共団体の長、委員会、委員、職員と法律で決められておりまして、議会は対象ではありません。都議会での議決に対して監査を請求することなんかできないに決まっているじゃないですか。地方自治法、大切な法律だと思うけど興味ないのかしら。

 

 先だっての都知事選のときにも思いましたが、マスコミも政治家も、あたかも「東京の問題=日本の問題」であるとでも言いたげでしたね。一地方自治体の知事選挙のニュースをどうして毎日毎日テレビで取り上げなければならないのか、僕はかなり違和感をもっていました。東京都のGDPスウェーデンの国家予算に匹敵する規模で、知事は「大統領並み」の強大な権限があるのだから、都知事選は全国民にとってとても大事なニュースなんですよ、などとエクスキューズをつけているニュース番組までありましたけど、予算規模が大きいだけで外交や国防の権限もない地方自治体の長が「大統領並み」なわけがないのです。

 ただ、東京オリンピックは、国と地方の関係とか日本と東京の関係とか、そういったものを見直す良い教材ではあるかもしれません。今のうちにその関係性をきちんと整理しておくと今後のニュースが分かりやすいかもしれませんね。

 では。